■背中を叩く■



高校に進学して遠い京都の学校へ電車通学になった。
朝、7時前にバスで駅までいって、そこから急行で
35分かけて電車に乗る。
そこから当時はあった路電に乗り換えて学校のもよりの
駅に着く。
降りるとそこから校舎までの通りを歩くのだがそこの
ポイントに妙な処があった。

登校する大勢の学生がごったがえになる通り。
少し右よりの、もう少しで校門という何でもない処で
突然、誰かに背中を叩かれる。

叩くというより勢いよく弾かれるような感じ。
一瞬のような気もするし誰・・というのも解らないし、
朝の忙しい登校時というのもあるので 数回、忘れた頃に
叩かれるので気にもとめなかった。
あの頃の年頃はそんなもんなのかもしれない・・・。
物事に柔軟というか---。
それが何か妙だよな・・と思って記憶の隅に残ったきっかけは、 私の前を歩いていた二人の女学生だった。
隙間も心ばかりの登校時のその道、前方のその二人と私の幅も殆ど並んだような間隔だったのに 突然その一人が「きゃっ!」と叫んで後ろを振り向く。
「何!?誰か叩いた?」
きょろきょろするその人の隣りにいたもう一人も突然、
「えっ!?だれか触った!」 とか言い出した。

朝の眠い状態の私は冷めた感じで
「ああ・・気のせいやなかったんや。」と解ったけれど 忙しい朝にはそれ留まりの感覚だった。

学校を卒業して久し振りにその路を歩く事があった。
よく考えたらあれって・・・おかしいよなぁ。
記憶を辿って思い起こせば妙な体験だし、当時それを特別どうと思わなかった自分も妙だったなぁと複雑・・・。 場所が古都だけにそんな事のひとつやふたつあってもおかしくない・・という 場所的なムードがそんな大らかな気持ちにさせていたのかもしれない。