■お知らせおじさん■



おじさんは優しい顔で笑っている。
どこの誰とも全然知らないけど優しく笑って私に教える。
21歳の時だった。
年齢的にも色々あって忙しい毎日だった。
仕事もプライベートも楽しいより大変な事が多かった
時期だ。

どこか行き詰まった空気が濃かったこの頃、
身体的に大変な事もあった。

おじさんはそんな頃、私の夢の中に現われた。
何か大勢の人の喧騒の雰囲気の中、電燈のような明かりの場所だった。
おもむろに私の目の前に来たおじさんは中年太りの人の良さそうなおじさんで<、にこにこと笑顔で言葉でない
言葉で私に何か話し掛けた。
私はその唐突な内容に夢のなかでもこれ以上ない位に
びっくり仰天していた。
全く知らないおじさんなのに思わず食い入ってその顔を
覗き込んで聞き返していた。
そんな私におじさんはにこにこしながら何度も頷いた。
そして「それ」が起こる出来事の詳しい日時までも
私に告げた。
でもその内容が余りにも信じられないような事だったので「そんな馬鹿な事が・・!」と
半場笑い飛ばすような感じだったけど・・・・・・
「それ」は確実におじさんが告知した通りに現実に起きた。
---夢のお告げである。なぜあの知らないおじさんが私にわざわざ教えに来たんだろうか・・。
あのおじさんの気のいい優しい笑顔が印象的だった。
しっかりと見たはずだったそのおじさんの顔はなぜか思い出そうとするが顔だけはどうしても思い出せない。

それから数年後-------。
そのおじさんらしき人が再び私のもとに現われた。
今度は現実の中だったけどおじさんの姿はなく、言葉だけが直接私の頭の中に送られてくるようなものだった。
その日は友達と数年付き合っていた彼氏と釣りに出掛けていた。
釣りの防波堤の場まで小さな渡船に乗っていた時だった。
水しぶきが少し飛び交う渡船に乗っていたらエンジンの大きな音の中で何となくあのおじさんの声が向かいに座っていた彼氏の右上空当たりから聞こえた。
「あのなぁ・・・この人と結婚するんやで・・・。」
「へっ・・・・・?」
おじさんは唐突な事を言う。
その時もそういう浮いた話はもうないと割り切っていた相手だったので余計に信じられなかった。 そんな馬鹿な・・・その時もまた半場笑い飛ばすような私だったし、ほんの何気ない感覚の再会だったので そのまま月日が
経った。

言葉が直接頭に送られてくる・・というのはこれ以降、
私はよく体験する事となるがこれは一概に 本当とは証明しにくい事だ。
いわゆる気のせい・・という事も往々にしてあるから。
第一、姿が見えなかったのになぜそのおじさんだったと断定出来たのか・・・
そこから信憑性自体ないし。でもなんだろう・・
これもその人の「気配」なのである。 矛盾しているようだがそれは姿がない分、はっきりと返って判別し易かったりするのだ。

それから数年後、おじさんの言った事はまた本当に
なった。
色々と成就するには問題が多かったのでスイスイと話が進んだのがそれ自体不思議だった。

色々教えてくれるのが不思議だけどそれよりも今はあのおじさんが一体誰なのか・・・その事の方が 私はとても知りたいと思っている。
それからあのクマのように丸っこい体をしてにこにこ笑っていたおじさんはもう現われない。